北大路魯山人先生のおっしゃる「納豆の茶漬け」

納豆

「納豆の茶漬け」という、北大路魯山人先生の随筆があります。昭和7年の作ですから今から90年近く前のことですね。

そこに出てくる「納豆の拵え方」のとおりに納豆を練り、納豆茶漬けを作って食べてみました。

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まずは何も加えず二本の箸でよく練り混ぜる

北大路魯山人『納豆の茶漬け』
ねり方がまずいと、納豆の味が出ない。

ねり方、つまり混ぜ方は納豆の味を左右する大きなポイントのようです。
そもそも納豆は混ぜる以外に手を加えないのですから、ここ以外に頑張りどころがない。よし、混ぜるぞ。

その前に、北大路先生の注意をチェック。

北大路魯山人『納豆の茶漬け』
納豆を器に出して、それになにも加えないで、そのまま、二本の箸でよくねりまぜる。

いつもは、添付のたれとからしを入れて、全部一緒に混ぜていました。でも、何も加えずに、まず混ぜるのですね。ということで、まずは納豆をパックから器に移し替えます。

納豆
一度も混ぜていない納豆。
糸が見当たらない

混ぜるのも「二本の箸で」という指定。納豆混ぜ棒みたいなのはNGなのか。


「何回混ぜろ」という回数の指示はないのですが、次のような描写でそれとなく程度を示唆してくださる北大路先生。

北大路魯山人『納豆の茶漬け』
そうすると、納豆の糸が多くなる。蓮から出る糸のようなものがふえて来て、かたくて練りにくくなって来る。

……蓮から出る糸って、なに?

あの花から糸って出たっけ?
あ?もしかして「蓮の花」じゃなくてレンコンのことかな?
昔は、かじると糸を引くレンコンってたくさんありましたが、今のレンコンって糸を引かないですね。そうかそうか、レンコンのことだ。

では、あのレンコンの糸のイメージで。

北大路魯山人『納豆の茶漬け』
この糸を出せば出すほど納豆は美味くなるのであるから、不精をしないで、また手間を惜しまず、極力ねりかえすべきである

出せば出すほどよいとのことです。糸に上限なし。

納豆
ご指示通り、二本の箸で混ぜる

真っ白になるまで混ぜてやろうと思うのですが、だんだん手が重くなってきました。

先生のおっしゃるとおり「かたくて練りにくくなって来る」のです。それでもなお「不精をしないで、また手間を惜しまず、極力ねりかえ」せと。疲れる。

醤油は少しずつ入れる


そしてさらに先生の御指南は続きます。

北大路魯山人『納豆の茶漬け』
かたく練り上げたら、醤油を数滴落としてまた練るのである

醤油を落としたらまたまた練る。しかも、醤油は一度に入れない。「数滴」ということは、4~5滴?先は長いな……。

北大路魯山人『納豆の茶漬け』
また醤油数滴を落として練る。要するにほんの少しずつ醤油をかけては、ねることを繰り返し、糸のすがたがなくなってどろどろになった納豆に、

一気に醤油を注ぎ込みたいところをガマン。

納豆
「醤油5滴投入→100回混ぜる」を
3回繰り返した状態

「糸のすがたがなくなってどろどろになった納豆」
これ、どういう状態でしょう?ここまで来るのに7~800回はまぜたのですが「糸のすがたがなくなってどろどろ」にはならないよ???もうこれでいいや。

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最後に辛子と刻みネギを投入

北大路魯山人『納豆の茶漬け』
辛子を入れてよく攪拌する。この時、好みによって薬味(ねぎのみじん切り)を少量混和すると、一段と味が強くなって美味い

やっと辛子を入れるお許しが出ました。
ねぎのみじん切りも混和しましょう。

納豆
いつもは刻む手間を惜しんで省略されがちなネギ

さらにまぜること200回。

先生。もう食べてもいいかな?腕の疲れも限界です。

納豆
つかれた。


お茶漬けのやり方ももちろん細かな指定があります。

まずは納豆ののせ方。

北大路魯山人『納豆の茶漬け』
茶碗に飯を少量盛った上へ、適当にのせる。

それほど細かくはありませんでした。適当でいいようです。

と思ったら、適当ではなかった。

北大路魯山人『納豆の茶漬け』
そうして飯の中に入れる納豆の量は、飯の四分の一程度がもっとも美味しい。
納豆


「四分の一程度」にしたつもりです。

北大路魯山人『納豆の茶漬け』
納豆は少なきに過ぎては味がわるく、多きに過ぎては口の中でうるさくて食べにくい。


そうですよね。納豆1に対してご飯3。図らずも、普段食べている割合は先生のご指定に近い。

混ぜに混ぜた納豆は、豆部分と糸部分の境界があいまいで、お互いが包みあうような優しさを感じました。豆と糸のワンネス。

お茶漬けなので、お茶をかけました。納豆にお茶をかけて食べたのは初めて。そこでわかったことは「私はお茶漬けにしないほうが好みだ」ということでした。

北大路魯山人『納豆の茶漬け』
これはたやすいやり方で、簡単にできるものである。

混ぜるだけという意味では簡単ですが、腕の疲れという意味では「たやすい」とは言い難いです、北大路先生。

「納豆の茶漬け」を目で味わうならこちら(青空文庫)

「納豆の茶漬け」を耳で味わうならこちら(さくや文庫さんの「青空朗読」)