鏡文字を書くコツは「鏡に映しながら書く」

鏡文字


小売店のレジのアルバイトをしていた学生時代の話。

必ずカード払いをされる常連のお客様がいらっしゃいました。

ときは平成の初め。
今のようにICチップの入ったカードで暗証番号を入力するのではなく、クレジットカードを使うときは署名が必須。

そしてそのお客様のサインは「鏡文字」。他にそんなサインは見たことがなく、四半世紀以上たった今も覚えているくらい印象的でした。


鏡文字は左右を反転させた文字で、書いた文字を鏡に映すと見慣れた文字になります。

鏡文字
向かって右が鏡文字。左は鏡に映したもの

レオナルド・ダ・ヴィンチがノートを鏡文字で書いていたり、「不思議の国のアリス」の作家、ルイス・キャロルが多くの手紙を鏡文字で書いていたそうです。

クレジットカードの署名を見て「自分も書いてみたい」と思い、当時の私は練習しました。

そして体得したコツは「鏡に映しながら書くこと」。
目の前の紙ではなく、鏡の中を見ながら書くのです。

たとえば「し」というひらがなは、通常まっすぐ下した線を「右」へカーブさせます。鏡文字はこれの左右反転なので、まっすぐ下した線を「左」へカーブさせる。

この動きを鏡に映すと、鏡の中のペンの動きは「まっすぐ下した線を右へカーブさせる」、つまり通常の「し」を書く動きと同じ。

だから、鏡の中のペンの動きが普通に文字を書いている動きと同じであれば、鏡文字のできあがりなのです。

鏡文字
右側の鏡の中だけ見ながら書いてます

……と、文字で書くといかにもカンタンですが、実際はかなり混乱します。

「私は今、鏡の中にいるの?それとも鏡の外?」と、自分の脳が攪拌される感じ。何が正しくて、何が違うのかわからなくなります。まさに不思議の国の鏡文字。

鏡文字を書いている間は「他のことを考えない(考えられない)」という点では「今ここ」に集中できるすばらしいエクササイズです。それから「何が正しくて、何が違うのか」わけがわからなくなりすぎて、どーでもよくなってくるところもよいです。このどーでもいいや感は、文字以外にも発揮したいところ……。

暇つぶしにぜひどうぞ。